洋服にも個体差(品質のバラつき)があることを意識しよう

ファッションコラム

洋服の個体差

先日、知り合いの洋服選びに付き合うことになりました。

最終的にはお気に入りのズボンが見つかってよかったのですが、よほど気に入ったのか、数週間後に色違いのズボンまで購入したと連絡がきました。

そしてそのズボンの履き心地が悪いと嘆いていました。

これには二つの理由が考えられます。

一つはまだ馴染んでいないことです。先に購入した方のズボンを何日かでも履き、洗濯をすることで生地の硬さが取れて身体に馴染んでおり、比べる対象があるだけに履き心地に違和感が出たケースです。

参考洋服の着心地を良くする方法

もう一つは洋服の個体差です。簡単に言うと品質のバラつきによる違いです。

たとえ品質が良いと言われているアパレルメーカーの洋服でも、多少のバラつきは必ずあります

もちろん品質のチェックをしていると思いますが、見た目にはわからないレベルのバラつきは避けることは出来ません。

品質チェックの基準

きちんとしたメーカーであれば、必ず品質のチェックが行われますが、それはあくまでも製品としての最低基準をクリアしているかどうかということです。

あきらかに縫製のミスがあったり、ほつれていれば品質のチェックで省くことができますが、実際に着用してみたときの印象はチェックできません。

見た目にはわからない程度のズレや違和感というのは、着用した本人にしかわからないことです。

それも知り合いのように、同じタイプの製品を着用したからこそ感じられる程度の違いです。

これは自動車で考えるとわかりやすくなります。

自動車は全く同じ車種でもバラつきがとても大きい製品です。一般の人が同じ車を同時期に購入することなどないので、普通は比較する機会がありません。

一方で会社で同じ車種の営業車に乗る人だと、このバラつきを実感する事があります。私自身も経験しているのですが、全く同じ時期に納入された同じ車種の新車でも、操作感や馬力の印象は違うものです。

自動車の場合はパワーが何倍にも増幅されるので、僅かな違いでもわかりやすい傾向があります。自動車のように何千、何万ものパーツが組み合わされる製品ほど、完成時にバラつきが出てしまいます。

自動車雑誌の企画などで、新しく発売されたスポーツカーの馬力をチェックするような企画があり、カタログ数値では280馬力だったのに、実際には250馬力ぐらいしか出ないような事は珍しくありません。

もちろん品質のチェックで製品としての最低基準はクリアしていますが、逆に言えば素晴らしく高品質な製品が紛れ込んでいるケースもあります。

自動車のレースに参戦するお金持ちのチームは、あらかじめベースとなる車を3台購入し、最もアタリの車をベースに改良するそうです。他の車は故障したときの部品取りに使用します。

洋服の個体差の話から逸れてしまいましたが、洋服は車ほど品質にバラつきが出るわけではないのですが、ミシンを使っていたとしてもそれを扱うのは人間なので、どうしても差が出てしまいます。

洋服の縫製は必ずしも設計段階で想定していた品質通りになるとは限りません。これを頭に入れて置いてほしいと思います。

縫製の技術

昔の洋服のように全てを手で縫っていた時代であれば、品質にバラつきがあるのはイメージできると思います。

現代の洋服の大半は工業ミシンで縫製されますが、ミシンに生地をセットして位置を調節するのは今でも人間です。

もちろんマニュアルがあり、誰が担当しても一定のレベルに仕上がるようになっていますが、やはりベテランと新人では差が出てしまいます。

ミシンで真っ直ぐに縫うだけなら難しくはないかも知れませんが、袖の付け根などの曲線を縫うには高度な技術が必要です。

見た目にはわからない程度の生地の引きつりやズレが出る可能性はゼロではありません。逆に新人のぎこちない手つきのおかげで丁寧になることもあるかも知れません。

このような品質の違いは見た目ではまずわかりません。見た目で分かるほどの失敗は弾かれています。

だからこそ洋服を購入する時は、必ず試着をする必要があります。そこで違和感がないかチェックする必要があります。

参考試着力を磨く事こそオシャレへの道

また酷いケースだと前に試着した人が太っていて、見た目ではわからないぐらいに生地が伸びてしまっている可能性だってあります。

人間の感覚の鋭さ

小学生や中学生の男子のように洋服に興味もなく、自分の意思で洋服を選んでいない場合は、試着の重要性は理解できません。

似合っているかどうかの定義も曖昧ですし、フィット感などさっぱりわからないと思います。これは成長期ということもあり、仕方がないことではありますが。

ですが成長が止まっている大人が同じような意識のままだと、どうしても残念な着こなしになってしまいます。

ファッション雑誌で紹介されていた有名ブランドの洋服を購入しても、フィット感がイマイチだと似合いようがありません。

手持ちの洋服のメンテナンスをするようになったり、何度も試着をしながら洋服を選ぶようになる事で、自分の身体にフィットした洋服を見極める眼力が磨かれていきます。

参考ファッションセンスがない男の特徴

日常的に料理をしている主婦であれば、当たり前のように自分なりに品質を見極める基準が出来上がっていきます。

すると初めて購入する食品でも、何となく品質の良しあしがわかるようになるわけです。少なくてもその食品がいくつも並べてある場合は、良さそうな食品を選ぶ事ができます。

野菜や肉の品質にも生産地やブランドによる違いだけではなく、やはり個体差があります。少なくとも見た目が悪い野菜を選んで購入することはありません。

有名ブランドの新しい洋服だからカッコ良いのではなく、あくまでも自分の体型やコーディネートやTPOに合っている洋服がカッコ良いのであり、それらの違いと向き合う事がないと、いつまで経っても自分の感覚が研ぎ澄まされていきません。

当然、洋服の品質やバラつきの違いを察知する事もできないので、外れ製品を手にとってしまいやすくなります。

洋服にも品質のバラつきがあることを頭に入れて置くと、試着をした時に違和感がある場合、「これは合わない」と安易に諦めてしまうのではなく、全く同じ洋服の別物を選ぶという選択肢が生まれます。

同じ洋服をいくつか試着してみると、想像以上に着心地に違いがあるものです。特にデニム生地のように張りのある洋服だと、ビックリするぐらい個体差があるものです。

低品質が生まれる理由

全てロボットが自動で作っている製品でも、品質に差が生まれることがあります。金属だって室温や湿度の影響を受けて伸び縮みしてしまいます。

高額でこだわりのある製品の場合は、極限まで品質を高められていることがありますが、多くの製品はほどほどの品質で良しとされています。

その理由は品質を高めるためのコストより、クレーム処理のコストの方が割安だからです。

品質を上げる為の1億円の設備投資より、返品処理の5千万円の方がビジネスとしては評価されます。このような合理的な判断があるので、低品質な製品が紛れ込んでいる事が珍しくありません。

よく日本の製品は世界的にみて高品質だと言われていますが、大型飛行機も有人ロッケトも作れません。一方でアメリカの車は品質がイマイチで故障も多いですが、大型飛行機のボーイングや宇宙開発の分野では、日本よりもずっと先にいます。低品質なイメージの強い中国ですら、有人ロケットに成功しています。

これがビジネス的な観点によるコストの違いです。日本人は根が真面目で職人気質な人が多いので、どんどん品質を高めてしまうのですが、ビジネス的には必ずしも正解だとは限らないわけです。

洋服のファストファッションの世界で考えると、ユニクロの製品は高品質で有名ですが、世界的にはZARAやH&MやGAPの方が評価されています。

私も一度ZARAの洋服を購入した事があるのですが、あまりにも縫製が適当で驚いてしまいました。タグは購入した日に取れてしまったほどです。

私はお気に入りの洋服を大切に扱いながら長く愛用したいタイプなので、縫製の良しあしは気になるポイントなのですが、シーズン毎に洋服を買い替えるような人にとっては、それほど重要なポイントではないのかも知れません。

これらのような洋服の品質にも個体差がある事を頭に入れて置くだけで、高品質なアタリ製品をつかむ確率が上がるので意識してみてください。

まとめ 品質の差を意識しよう

電化製品のようなモノだと品質のバラつきを判断することは難しいですが、手に取ることができる洋服などは、アタリの製品をつかむ確率をグッと上げることができます。

昨年に知り合いの男性が財布を購入する時にも、同じようなことがありました。

彼はいくつかの財布の形で悩んでおり、結果的に二つ折りの革財布を選んで購入しようとしたのですが、そこで私がお店の人に「この財布の在庫はありますか?」と尋ね、あるだけ並べてもらいました。

最初は彼も意味がわからなかったようで「?」の表情を浮かべていたのですが、「革製品は色味が微妙に違うから気に入った財布を選ぶといいよ」とアドバイスしました。

同じ財布を並べてみると色味の違いがあるだけでなく、手に取った時の印象も違うようで、彼は財布を閉じた時の感覚の違いに驚いていました。最終的には、

「これが一番パタッと閉じて気持ちがいい」

という理由で選んでいました。とても満足していて私も嬉しかったです。

革製品のような小物でも、革の部位によって品質にバラつきがあるものです。特に小物の革製品の端切れがあてがわれることが多いので、品質に差が出やすい傾向があります。

高級ブランドの革製品というのは、元となる皮の中の良い箇所を厳選して使用していますが、革だって元々は動物の皮なわけで、差がないと考える方が不自然です。

洋服の生地だと革製品ほどの差があるわけではありませんが、縫製の差や保管状態の差がある事もあるので、意識してみてください。

もちろん製作者でもない限り、完璧に品質の差を見極めることは出来ませんが、少なくとも同じ製品の中から気に入ったモノを選ぶことで、より満足度は高まります。

おそらくジーパンが好きな人は、僅かな色味の違いもチェックして購入するのではないでしょうか。吟味すればするほど、同じ価格で購入しても満足度が高まるはずです。

人間の感覚というのは本当に優れているもので、たとえ違いを言葉にできなくても、何となくでも伝わってくるものがあるものです。

特に着心地のような皮膚感覚というのは、言葉にするのが難しいです。明らかに見た目で分かる要素は品質チェックで弾く事ができますが、微妙な縫製の違いというのは、袖を通してみないと分からないものです。

この自分の感覚を大切にしてください。

この感覚に敏感でいると、あらゆるモノの判断基準が磨かれていきます。

洋服に限った話ではありませんが、どんな製品でも個体差があるものです。この感覚に敏感でいると、上辺だけを取り繕った製品や人物を見極めやすくなります。

洋服の品質の差を意識するだけで成長するというと、大げさに聞こえるかも知れませんが、今まで意識してこなかった事を意識に上げるという事は、新しい知識、新しい基準が生まれるということです。

あまり神経質になる必要はありませんが、洋服にも個体差があるということだけでも覚えておいてください。知っているというだけで、何か違和感を感じた時の選択肢が一つ増えて解決に近づきやすくなります。

ちなみに私が洋服を購入する時は、目星をつけた洋服と前後のサイズも試着室に持ち込んでフィット感を確かめ、これだと決めたら再び同じサイズの洋服を三つぐらい試着室に持ち込み、一番相性が良いものを選んでいます。

かなり面倒に感じるかも知れませんが、これをやって違いが感じられるようになると、やらずにはいられなくなります。フィット感だけでなく、シワの出方が違ったり、生地の引きつり具合が違ったりするので、確かめずに購入する方が怖いぐらいです。

もちろんTシャツや下着や靴下のように試着が難しいものは別ですが、全く同じ洋服でも想像以上に品質に差があるものなので、高価な洋服を購入する時だけでも、慎重に選んでみてください。

しっかりと吟味して選んだ洋服というのは、大切に扱うようになるので、ますます自分の魅力を引き出してくれるようになるものですよ。

【関連記事】
ファッションに無頓着なことのリスク

ウィンドウショッピングという学び

オシャレは自分の内面を観察すること