GUのスーツがコスパ最高!ってアピールはどうかと思う

ファッションコラム

コスパ最高のファストファッションGU

ユニクロの弟分というポジションで急成長しているファストファッションブランドのGUが、カンブリア宮殿というテレビ番組で特集されていました。

圧倒的な低価格ながらも品質も悪くなくトレンドも抑えているので、コスパという意味では素晴らしいファッションブランドです。

番組を見ていると感心させられる事が多く、同じ洋服でもカラーによって生産国を分けており、予測が経つ定番のカラーは人件費が安い国で大量生産してコストを抑え、流行のカラーは変更スピードが求められるので、在庫も豊富で技術力も確立されている中国で生産する事で、輸送時間を短縮していました。

さらに縫製される前の生地の保管方法も気をつけており、ロールになっている重たい生地を重ね過ぎると潰れてしまうので、高さ制限まで設けていて感心しました。

安価な価格でトレンドファッションを楽しめるという意味では、GUがコスパ最高というのも頷けるのですが、これが男性ファッションとなると少し意味合いが変わってきます。

男性ファッションの流行は女性ファッションほど変化が激しいわけでもなく、シーズン毎に使い捨てるような着方をする人が多いわけでもありません。

もちろん男性でもカジュアルな流行のファッションが好きな人であればGUと相性が良いとは思いますが、スーツやジャケットのような洋服だとGUはどうかなと思えてしまいました。

なぜならそのテレビ番組に出演していた社長が自慢げに着ていたGUのスーツのフィット感がイマイチだったからです。

スーツの魅力

昔は街のテーラーでスーツをオーダーメードする事が主流だったので、それなりの価格になっていたのですが、だからこそ大手紳士服店が大量生産で安価なスーツを作る事で大成功を収めました。

ただそれまでオーダーメードでフィットしていたスーツを着ていた層からすると、吊るし(既成サイズ)のスーツはフィット感がイマイチなので、一定数の男性はオーダースーツを好んでいたのですが、大手紳士服の企業努力で吊るしのスーツでも様々な体型(Y体やA体やAB体など)に対応するようになり、さらに1~2cm程度であれば袖や胴回りを詰める事もできるので、多くの男性の体型にフィットさせる事ができるようになりました。

普段ダサいお父さんでもスーツを着るとそれなりに見えるのは、まさにこのフィット感が優れているからです。多くの紳士服店では店員さんがサイズ合わせ手伝ってくれるので、ファッションに無頓着な男性でもそれなりにスマートに着こなす事ができるのが、スーツの魅力でもあります。

カジュアルなファッションのようなSMLといったサイズ展開の洋服というのは、よほど運よくフィットする体型の持ち主でもない限り、なかなかフィットするものではありません。

いわゆるモデル体型というのはLサイズがバッチリと合う人の体型であり、デザインもLサイズを中心に構成されているので、SやMでフィットしたとしても、デザインのバランスがイマイチだというケースもあります。

これは子供服のバランスで考えると分かりやすいと思います。

特徴的なロゴや柄が大きく見えてしまうデザインの洋服だと、サイズが変わるとバランスが崩れてしまいます。

子供が着ている分には可愛らしいものですが、特徴的なデザインの洋服ほどLLやSだとバランスが悪くなってしまう事があります。チェック柄などは違いが分かりやすいでしょうか。

これは靴紐の長さで考えてみても分かりやすいかも知れません。最も売れ筋の26cmの靴にバランスが良い靴紐の長さに設定されているので、27cmの靴だと靴紐が短くなったり、25cmだと長過ぎになる事があります。

もちろん足の甲の高さや肉付きによっても相性が変わるので、26cmでもピッタリの長さだとは限らないのですが、靴紐ぐらいであれば変更可能なので難しい事ではありません。

ただ洋服のデザインはサイズに合わせて変えられるものではないので、SやLLだとバランスがおかしくなってしまう事があります。

もちろん特徴的なデザインがない無地の洋服であれば、SやMでもバランスよくフィットする体型の人がいますし、チェック柄といっても大きな柄でなければ多くの洋服の大きさに合うのですが、洋服のフィット感というのは身体との相性だけでなく、デザインとのバランスも関係してくるだけに、未だにオーダーメードのスーツを選ぶ人が珍しくありません。

オーダースーツだと身体のサイズに合わせられるだけでなく、胸ポケットの位置やボタンの大きさもピタリを合わせる事ができるので、よりバランスが良くなります。

それでも街の大手紳士服店のように様々な体型に対応できるサイズを用意してくれているところで購入すれば、スーツならではのフィット感を手にする事ができます。

ただGUのオンラインストアでスーツのサイズ表を確認してみると、カジュアルな洋服のようなSMLといったサイズ展開しかなかったので、スーツならではの魅力を引き出す事が難しくなります。

価格のわりには生地や縫製が良く、デザインも悪くはないと思いますが、モデル体型の男性でもない限り、街の紳士服のスーツのようなフィット感は得られません。

カンブリア宮殿に出演していたGUの社長さんのスーツも、首周りがずっと浮いてしまっており、全体的にブカブカで皺も多く、広告塔としては全く良いアピールになっていませんでした。

ユニクロの社長のファッション

その番組にはGUがユニクロの弟分(妹分の方が良いらしいですが)という事もあり、ファーストリテイリングの柳井さんも出演していたのですが、柳井さんはユニクロで売られているスーツやジャケットを着ておらず、襟付きのシャツの上にニットを合わせていました。

柳井さんは公式の場ではビシっとスーツを着ているのですが、雑誌のインタビューなどではよくニットを着ています。ニットは伸縮性があるだけに身体にフィットしやすい洋服です。

最近のユニクロはオーダーメード感覚で作れるスーツを販売するようになり、シャツも襟や袖の長さを指定できる簡易オーダーを受け付けるようになったので、しっかりとサイズを合わせれば街の紳士服のスーツの並のフィット感を手に入れる事が可能になりました。

それでも柳井さんがニットを着てメディアの前に出るのは、スーツの着こなしの繊細さを分かっているからなのではないでしょうか。

実は何年か前のカンブリア宮殿で鎌倉シャツの特集があり、その時もユニクロの柳井さんが出演していたのですが、「シャツに関しては鎌倉シャツにはかなわない」と絶賛しており、その時のスーツに合わせていたのもユニクロのシャツではなく鎌倉シャツとの事でした(うる覚えなので間違えていたらすいません)。

当時のユニクロのシャツはSMLのサイズ展開に加えて、レギュラーフィットとスリムフィットがあったのですが、やはりそれだけだとフィットさせるのが難しかったわけです。

鎌倉シャツもオーダーではないのですが、街の紳士服店で売られているYシャツのように襟や袖の長さがかなり細かく設定されているので、多くの男性の身体に合わせる事ができます。

私自身も何枚か鎌倉シャツを所有していますが、立体的な縫製で仕上げられているので襟元のアイロンがけが大変(褒め言葉です)なものです。

襟に膨らむがあるのが分かるでしょうか。アイロンをスーッと横にかけると皺だらけになってしまうので、角度を変えながら少しずつ追い込んでいかなければなりません。ただこの立体的な縫製のおかげで首元にフィットしてくれ、喉元の詰まりもなく着心地も良くなります。

さらに細かな事をいえば、着用している時に横から見ると、平面のシャツの襟のような前下がりの角度でなくなるので、スーツの襟とのフィット感も抜群に良くなります。

当時のユニクロはエクストラファインコットンという上質な綿を使ったシャツをアピールしていただけに、それを着ないで鎌倉シャツを着ていた柳井さんに驚いたものです。

ユニクロの店舗で売られているジャケットでも、レギュラーフィットとスリムフィットがあるのですが、GUのスーツにはそれすらも設定されていないので、どんなにコスパが良くても似合う体型の男性は限りなく少なくなります

カジュアルなファッションであれば、あえてゆったり目のサイズを選んだり、コーディネートでイマイチなフィット感を誤魔化したり、袖を巻くって誤魔化すような事も出来ますが、スーツとなると裾上げぐらいしか調節できません。

モデル体型の男性以外、似合う可能性が限りなく低いのがGUのスーツです。

私自身はGUのスーツを購入したわけでもないので、品質については何も言えないのですが、どんなにコスパが良いとしても誰にでも勧められるスーツではありませんし、倍ぐらいの価格になったとしても街の紳士服店でしっかりとサイズを合わせてもらった方が、似合う確率が何倍にも跳ね上がると思います。

スーツは袖の長さが1cm変わるだけで随分とバランスが変わりますし、顔の大きさに合うラペルの幅や、Vゾーンの大きさに合わせたシャツの襟の角度など、細かな差によって印象が変わるので、それらも含めてすべて自分で見極められない男性にとっては、サイズ合わせが難しいGUのスーツは良い選択肢ではありません。

カジュアルなファッションだと多くの男性がゆったりめを選んでいるだけに、その差も出にくいのですが、スーツはきちんとサイズを合わせている男性が多いだけに、GUのようなサイズ展開が少ないところで購入すると、相対的に残念な印象(サイズ感がイマイチ)になる可能性がかなり高くなります。

もちろんカジュアルなファッションでもしっかりとサイズを合わせてコーディネートする事で、周りの適当な着こなしの男性達よりも一つ上の着こなしが出来るのですが、GUのスーツだとこれと逆の事が起こるので、どんなにコスパが良くてもリスクが高過ぎます。

特に新社会人になって初めてスーツを購入するような男性が、コスパだけでGUのスーツを選んでしまうと、まるでフィットしないちぐはぐな印象になってしまうかも知れないので気をつけてほしいと思います。

まとめ GUの活かし方

カンブリア宮殿のスタジオの中でGUのイマイチフィットしていないスーツを着ていた細身の社長さんも、普段の仕事場の撮影ではニットを着ている事が多く、その方がずっと素敵な着こなしになっていました。

これはファストファッションブランドだからこその洋服選びなのかも知れませんが、普段から着るスーツとしてはイマイチだという事を、心のどこかで実感しているのかとも思えました。

スーツのラペルの折り目もペタンとなって安っぽい印象でしたし、ズボンの裾も詰まって皺だらけでしたし、オンラインショップの男性モデルの着こなしを見てもサイズ感がイマイチだったり、ベストの一番下のボタンも留めていてしまっていたりと、隙が多くみられました。

番組の中で紹介されていたGUの洋服も女性ものが中心であり、お客様の声を聞いて商品に反映するといった事も女性スタッフばかりだったので、男性ファッションに関してはGUはそれほど力を入れていません

スタジオ内でマネキンが着た洋服が紹介されていたのですが、男性用のマネキンが履いていた黒い革靴の紐の通し方が、一般的な革靴に多いシングルやパラレルではなく、スニーカーなどに用いられる事が多いオーバーラップであり、男性ファッションに詳しいスタッフは多くないのだと想像できました。

GUはあくまでも女性向けカジュアルファッションブランドなので、スーツやジャケットのような男性ファッションとの相性が良いタイプのブランドではありません。

コスパという意味では文句のつけようがないほど素晴らしいとは思いますし、カジュアルなファッションであれば悪くはないと思いますが、ユニクロの洋服と比べるとGUの洋服は化学繊維の割合が多いので、体臭が強いタイプの男性とも相性が良くないかと思われます。

私も何度かGUの店内の洋服を眺めてみた事がありますが、価格の安さに驚く事はあっても欲しいと思うまでの物は見当たらなかったので、今のところ一度も購入した事がありません。

これは品質が悪いとかデザインが奇抜だとか言いたいわけではなく、素材をチェックすると合わないなと感じる物が多かったからです。私は腋臭体質なので化学繊維と相性が良くありません。

男性向けの洋服もカジュアルなものが中心で若者向きではありましたが、定番カラーもしっかりと抑えていたので、それらが悪いと言いたいわけではありません。コスパという意味では本当に素晴らしいブランドだと思います。

あくまでも相性の問題ではありますが、GUはユニクロほどは男性ファッションに力を入れているわけではないので、現状では価格差さえ問題にならなければユニクロを選んでおいた方が良いかなと思います。

ファッション雑誌でGUのスーツを絶賛するような事は多くないのですが、週刊誌の一部のコーナーや一部のファッションブロガーが、やたらとGUのスーツを持ち上げている事があり、それを鵜吞みにしてモデル体型ではない男性が選んでしまうと、おかしな着こなしになってしまう可能性が高いので気をつけてください。

細身のGUの社長さんがテレビの前で自らスーツを着て広告塔になったのは、はっきりいってマイナスプロモーションでした。

普段の仕事場のようにカジュアルなファッションを着ていた時の方がずっとバランスが良かったですし、本気でスーツの良さをアピールしたいのであれば、ジャケットの下にベストを合わせるのではなく、厚みの出るニットを合わせた方が細身の身体を補ってフィットしたかも知れません。

何年か前にライザップが流行っていた頃、ライザップの社長がまるで結果にコミットしていない体型でテレビに出ており、思わず笑ってしまった事を思い出しました。

ファーストリテイリングの柳井さんがかしこまった場以外では、自分の体型に合うユニクロの洋服を上手く選んでいるように、こういったところからも企業の考え方というものが見えてくるものです。

GUを急成長させた社長さんの手腕は素晴らしいですし、現場の女性の意見を積極的に取り入れて改善していく姿には感動しましたが、男性ファッションに関していえば、まだまだユニクロとの差は大きいと感じます。

そもそもGUは女性向けのカジュアルファッションが中心のブランドなので、こんなことを期待する私の方がおかしいのかも知れませんが、有名なファッションブロガーがやたらとGUのスーツを推しているのを見かけるので、裏でつながっているのではないかと想像したくなるものです。

GUの男性向けのスーツのコスパに関して文句があるわけではないのですが、スーツの最大の魅力であるフィット感という意味では全くもって最適解ではないので、安易に価格だけで選んでしまわうように注意してほしいと思います。

もちろん自分でしっかりと試着をしてフィット感を見極められる男性であれば、最高のコスパでスーツを手に入れられるかも知れません。ただそれが出来るのは既にフィット感の良いスーツの基準を持ち合わせている人だけであり、新社会人のようにスーツの基準がない男性にとっては、かなり無謀な事なので避けた方が良いかと思います。

街の紳士服店でもキャンペーンやセールを利用すれば1~2万円でスーツをつくれますし、店員さんのアドバイスも受けられるのでずっとお勧めです。シャツやネクタイも相性が良いものを選んでくれますし、極端に流行遅れの物があるわけでもないので、初心者にとってはありがたい購入方法なのではないでしょうか。

男性ファッションの良しあしというのは、分かりやすい目立つアイテムや流行のアイテムで決まるのではなく、このような微差の積み重ねで構築されるものなので、安易にコスパだけで選ばない方が良いかと思います。

もちろん逆にブランド名ありきで高価な洋服を選んだからといってフィットするわけでもありません。あくまでも自分の体型と相性の良いブランドの洋服が似合うのであり、有名ブランドと相性が良い人もいれば、GUと相性が良い人もいます。

GUのコスパ抜群のスーツが悪いわけではなく、あくまでも相性の問題なのですが、コスパを考えてGUのスーツの購入を考えている男性は、街の紳士服店のスーツと比べると圧倒的にサイズ展開がないので、かなり難しいという事を覚えておいてほしいと思います。

コストパフォーマンスのコストに関していえば、有名ファッションブロガーが言うように素晴らしいのだとは思いますが、スーツのパフォーマンスは生地や縫製やデザインの良しあしだけでなく、サイズ展開が豊富でフィットさせやすい点もパフォーマンスの一部なので、ここが期待できないGUのスーツはパフォーマンスが高いとは言えないはずです。

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