試着力を磨く事こそがオシャレな男性への道のり

ファッションコラム

試着のスキル

最近はAIなどの進歩もあり、ネット上で合成してバーチャル試着が出来るような技術が生まれてきました。

話題になったZOZOスーツなどもそうですが、ネット通販などで試着なしでフィットする洋服を見つける事は困難な事です。

もちろん市販の洋服のサイズに運よくピタリと合う体型の男性もいるので、何を着ても平均以上に似合ってしまうラッキーな男性もいるのですが、そのような人でもしっかりと試着をする事で、よりフィットした洋服選びが出来るようになります。

当ブログでは何度も試着の重要性について紹介してきましたが、

多くの一般男性は洋服の購入時の試着を適当に済ませてしまうので、なかなか似合う洋服を手に入れられません。

バーチャル試着のような技術が悪いわけではありませんが、あれはどちらかと言えば、コーディネートといった要素を見極めるのに優れているのであり、細かなフィット感を見極める事は難しいものです。

それこそZOZOスーツがあまり上手くいかなかったように、実際に袖を通してみないと分からない事がたくさんあります。

試着力を磨く事こそが、オシャレな男性への道のりなのだと感じています。

試着力による差

少し前に放送されたテレビ番組でオリジナルジーンズを作る企画があり、出演者の男性芸能人が専門店に訪れていました。

オリジナルジーンズといってもオーダーメードという事ではなく、既に縫製されているジーンズの中から好みのものを選び、最後に好きなリベット(ボタン)やラベル(革パッチ)を取り付けるような感じでした。

その番組で印象的だったのが、出演者である二人の男性芸能人の試着時間の違いです。

一人目は店主におすすめされた生地をパッと選び、一度の試着で決めてしまったのですが、もう一人は時間をかけて試着を繰り返し、別の女性芸能人からは「男らしくない!」と揶揄されたり、一人目の男性からは「お前は衣装合わせも長いとからな!」とバカにされ、「もう40分も経っていますよ!」と時計を見せながら笑い者にしていました。

ただそのような事を言われても、二人目の彼は全く気にする事なく試着を繰り返し、同じ生地でも1つ下のサイズを試したり、おすすめされたジーンズよりもさらにストレッチ素材のものを試したり、シルエットが違うスキニータイプを試着したりと、かなりこだわって試着をしていました。

初めに6着ものにジーンズを試着室に持ち込み、その後にも一度試着したジーンズを再び履いたり、前後のサイズを試すなど慎重に見極めていました。

ただ彼が試着に時間をかけながらも選んだジーンズは、一人目が選んだ店主のおすすめ生地と同じ物になり、違いはサイズとオリジナル要素のリベットとラペルぐらいだったのですが、その仕上がりは全くの別物でした

左がパッと選んだ男性のジーンズで、右が時間を掛けて選んだ男性のジーンズです。

彼らは二人ともスリムな体型の持ち主で身長もそれほど違わないのですが、全然フィット感が違うのが分かるでしょうか。

明らかに試着を繰り返した右の男性のジーンズの方がフィットしており、余計なシワもなく足がスラーと長く見える着こなしになっています。

ジーンズはダボっと着るのが好きな男性もいるので、必ずしもパッと決めた左側の着こなしが悪いとは言いませんが、足が短く見えてしまっているのはマイナスではないでしょうか。

クラシックな昔の製法で作られているジーンズだと、生地も硬くて縫製もガッチリしているので、あえて緩めのサイズを選ぶのも理解できるのですが、現在はデニム生地の進化もあって様々なシルエットに対応できるようになりました。

女性のジーンズだと体型にピタッとフィットさせたスキニータイプが主流になっていますが、

昔のデニム生地でここまでフィットさせてしまうと、まともに動く事すら出来ません。デニム生地の横糸に伸縮性をもたせられるようになったからこそ、ジーンズのデザインやシルエットは多様化してきました。

とはいえストッキングのように全方向に伸びるわけでもないので、ピチピチに伸びているような状態だと、そこの生地の色が薄くなってしまいます。

スキニータイプのジーンズをオシャレに履いている女性というのは、かなり慎重に試着を繰り返して自分の体型のギリギリのラインを狙って選んでいます。

特定のブランドありきで選ぶとこうはいきません。いかに自分の体型に近いシルエットのスキニージーンズを見つけられるかがポイントになるので、ネット通販でスキニージーンズを買う女性は滅多にいません。

流石に男性のジーンズは女性ほどピタッとフィットさせてしまうと、やり過ぎになってしまうので程よいフィット感が求められるのですが、二人目の彼やオシャレな女性のように慎重に試着を繰り返して選ばない事には、理想的なフィット感の洋服は手に入れられません。

これが男女のファッションレベルの差でもあります。

この程よいフィット感を見極める為には、実際に試着を繰り返して鏡の前で確認しながら選ぶしかありません。

この鏡の前で向き合ってきた経験値が男女では全く違うので、そもそも試着をしても見極めるスキルがないのかも知れません。

試着を繰り返していた彼は、「これかな」と決めた後でも、店内を歩き回って履き心地を確かめていました。このような行動を取れる事こそが、まさに試着の重要性を理解している事を表しています。

男が洋服を選ぶ時の試着時間が長い事をバカにするような風潮があるのかも知れませんが、このような微差がオシャレのレベルを左右するものです。

細かな事を気にしないでパッと選ぶのが男らしいという考え方もあるのかも知れませんが、そんなものは人前で見せなければ良いだけです。

ユニクロのようなファストファッションのお店でも、男性向けのジーンズだけで4種類ぐらいのシルエットを用意してしますし、さらに細かく数センチ刻みでサイズが分かれています。

TシャツのようにSMLといった大雑把な選び方では、程よく体型にフィットしたジーンズは見つけられません。

試着が出来ないネット通販でAIといった最新技術に頼るのが悪いとは言いませんが、試着をする技術(見極めるスキル)というのは、そんな簡単なものではありません。

鏡と向き合うという事

当ブログでは以前にファッションセンスがない男性の特徴として、自宅に全身が写る姿見(大きな鏡)がないと紹介した事があるのですが、

鏡を見る習慣がない男性というのは、そもそも自分の身体にフィットした状態が分からないので、試着をしたところで簡単には見極められません。

当たり前の事ですが、鏡を見るという行為は自分と向き合うという事です。

日頃から鏡と向き合う機会がない人というのは、自分が他人からどのように見えているのか理解できないので、改善点にも気がつけないものです。

一応試着をするという男性でも、試着室の鏡の前だけ姿勢を正しても普段の姿勢が悪いとフィット感は変わります。ズボンだと靴を履いたりベルトを通す事で、バランスが変わってしまう事もあります。

鏡を見る習慣がないと、これらのような微差も感じ取れないので、試着室で着てみた時はそれなりに良いと思っても、実際に普段着てみるとイマイチという事になってしまいます。

きちんと試着をしないというのは、料理人が味見をしないような事です。きちんとした料理人ほど、普段から作り慣れている料理でも味見をして確認しています。

新しい料理や食材を試した時だけ味見をするのではなく、使い慣れている食材といったものでも、日々確認しながら食材の僅かな違いと向き合っています

同じお店から仕入れているトマトでも、季節によって酸味や甘みは変わるものですし、気温や保存状態によっても状態は変わります。

日々それらの微差と向き合っている料理人であれば、その微差に合わせて微調整する事ができますが、そうではない人はレシピ通りにしか作れないので、上手くいかなかった時の原因に気がつく事ができません

それこそAIによるバーチャル試着やZOZOスーツのような事です。参考にするのは構いませんが、そこに頼ってばかりいると、

「何かイマイチなんだよなー」

の「何か」が分からないので対応できません。

女性は胸の大きさによって体型の個人差が大きいですし、メイクや髪型をセットする手間も多いので、男性よりも圧倒的に鏡と向き合ってきた経験があります。この経験の差が試着時にも役立ってくれるので、オシャレのレベルの差となって表われてしまいます。

スーツはお店の人がフィット感を確かめてくれるので、普段着がダサいお父さんでもそれなりにカッコ良く着こなせる可能性が高いのですが、サイズ展開が少ないカジュアルファッションほど、自分で試着をして見極める技術がないと、よほど運よく自分の体型にフィットしたブランドの洋服にでも出会えない限り、オシャレに見える事はありません。

試着力を磨く事こそ、オシャレな男性への道のりだという意味が理解できたでしょうか。

オシャレは微差

オシャレが好きな事と、オシャレな印象に見える事というのは、似ているようで全く違います。

料理人のこだわりが詰まった料理が、必ずしも美味しいとは限らないように、オシャレが大好きな人のファッションが、他人からオシャレな印象になるかというと、そうでもありません。

人の好みはそれぞれなので、特定の個性というのは諸刃の剣です。もちろん好みが一致している人には好かれる可能性が高まりますが、それでもない人にとっては悪目立ちといった印象になってしまいます。

オシャレな印象に見える男性というのは、特定の個性が際立っているのではなく、誰から見ても違和感がない着こなしだとも言えます。

全く同じデニム生地のジーンズでも、しっかりと向き合ってフィットしたものを選ぶ事で、こまかな違和感を排除する事につながり、結果的に多くの人にオシャレな印象として映るようになります。

全く同じ食材から作られた料理でも、丁寧に下ごしらえをしたり、アク抜きをした料理だと美味しくなるものですが、それらを怠って適当に作られた料理だと、その食材が好きな一部の人からしか好かれないような事です。

ブランド名ありきで特定のファッションアイテムを選んだり、流行しているからという理由で選んでいる人ほど、このようなズレが生じでおかしなバランスになってしまいます。

モデル体型のイケメン男性であれば、そのような基準で選んでも似合ってしまう事があるのですが、それは市販の洋服のサイズ(L)はモデル体型に似合う前提でデザインされているからでもあります。

特徴的なデザインもLサイズを中心にバランスが取れるように設計されているので、サイズが変わればバランスも変わってしまいます。

MやLLを選ぶ男性であれば、そのようなバランスも見極める必要がありますし、そのような特徴的なデザインを避けた方がバランスが取れる事は珍しくありません。

スーツのような個性が強くないデザインの洋服でも、ラペルの太さや角度によって相性の良い顔の大きさや首の太さというものがありますし、そのラペルに合わせてネクタイの太さを選んだり、シャツの襟の角度にも相性があります。

そのシャツの襟の角度によっても、相性の良いネクタイの結び目の大きさがあるので、モデル体型の男性でもない限り、平均的な組み合わせだけでバランスが取れるものではありません。

これらのような微差と向き合わい限り、バランスが取れる事が難しいですし、たまたま運よくバランスが取れても、その理由が分からないので再現する事ができません

まとめ 試着力を磨け!

何を着てもオシャレな印象にうつる男性というのは、何を着てもオシャレになるのではなく、しっかりと試着をして似合わない洋服を避けているからであり、誰かのファッションをそっくりそのまま真似ているわけではありません。

コーディネートといった面では、ファッション雑誌やオシャレな印象の人の恰好は参考になりますが、全く同じ洋服を選ぶ事がオシャレになる事ではないので、そこは間違えないでください。

日頃から鏡の前の自分の着こなしと向き合い、試着を繰り返しながら試着力を磨く事こそ、オシャレな男性への道のりなので、女性のようにしっかりと経験値を積み重ねていってください。

冒頭で紹介したオリジナルジーンズが作れるお店の店主の恰好が印象的だったのですが、かなり高級そうなダメージ加工のジーンズをダボっと履いていました。

ただ似合っていたかというと全く別の問題です。ジーンズからウォレットチェーンが垂れており、両手の指に大きなシルバーアクセサリーをつけ、さらに両腕に腕時計までしていました。

相当ファッションにこだわりが強い事は伝わってきましたが、はっきりいって清潔感のないダサいファッションにしか見えませんでした。

このようなファッションは好みの問題ではありますが、私には全くもって似合っているようには見えませんでしたし、おそらく男性よりもファッションセンスが高い多くの女性も、同じような印象にうつるはずです。

もちろんオリジナルジーンズが作れるようなお店なので、ジーンズマニアのお客さんからは評価されるファッションなのかも知れません。

それはそれでお店の恰好としては相応しいのかも知れませんが、普段の恰好としては足し算のし過ぎなやり過ぎなファッションなので、一般の人が活きる場などそうそうあるものではありません。

一方で試着を繰り返して慎重に選んでいた芸能人のジーンズは、とても清潔感のあるスマートな着こなしなので、誰からも嫌われません。

ゴルフ場やドレスコードのあるような場でもない限り、多くの場で通用する着こなしです。色落ちしていないデニムであれば、ジャケットを合わせれば品が保てますし、カジュアルなファッションとも相性が良いです。

一方でパッとサイズが大きめのジーンズを選んだ芸能人の着こなしだと、ジャケットを合わせるのは難しいですし、オーバーサイズのTシャツぐらいしか、相性が良くないのではないでしょうか。

上着にフィットしているジャケットやコートを着てしまうと、下膨れになってバランスが崩れてしまいます。

パッと選んだほうの彼も引き締まった体型の持ち主だったので、少しぐらいサイズが大きくても太っているようには見えないのですが、中年太りの男性が同じような着こなしをしてしまうと、ズボンの股の位置が下がって生地もたるんでしまうので、見た目の重心が下がって小太り感が強調されてしまいます。当然清潔感もありません。

男性のファッションはピチピチにフィットするのが良いわけではありませんが、必要以上に大き過ぎると皺が増えたり、余計な生地のせいで重たくなったり、まとわりついて疲れやすくなったり、股の位置が下がって短足に見えてしまうものです。

清潔感のある若者であれば、腰パンのようなファッションを取り入れても悪くないのかも知れませんが、だからといって魅力が上がっているかというと、そんな事はありません

やんちゃな男性や不良が好きな、極一部の女性にしか好かれないファッションです。

多くの男性はファッションで自分の魅力を引き出せていないどころか、余計な事をして魅力を引き下げてしまっています。オシャレが好きな男性が個性的なファッションを取り入れている事は多いですが、魅力を下げないフィットした洋服を選んでいる男性は本当に少ないです。

オシャレが好きな事とオシャレな印象にうつる事は全く違うので、安易にファッション雑誌で紹介されているような有名ブランドの洋服を真似たり、中途半端なこだわりを取り入れてしまうのは避けた方が良いかと思います。

せっかくお金をかけて魅力を下げるなどバカバカしいはずです。

特定の女性を落としたいのであれば、その女性の好みに合わせて個性的なファッションをするのも良いとは思いますが、それは辛い料理が好きな人に向けて激辛にするような事なので、辛い料理が好きでもないその他多くの人からは避けられる要因となってしまいます。

それこそオリジナルジーンズが作れるお店の店主のように、特定の場では有効に働くファッションというものもありますが、個性が強い要素ほど使いどころが難しいので、安易には真似ない方が良いかと思います。

TPOに合わせてしっかりと使い分けられないと、期待していたメリットよりもデメリットばかりになってしまいます。

洋服を購入する前にはしっかりと試着をしてください。目星をつけた洋服の前後のサイズを試したり、少しシルエットが違うものを試したりすると、より程よいフィット感の洋服が見つけられやすくなります。

ズボンなら最後にベルトを通して靴を履いて見極めてみてください。これらをせずに裾上げをしてしまうと、微妙なズレが生じてしまいます。

襟のフィット感が重要なジャケットを選ぶのであれば、襟付きシャツを着ていないと見極められません。こういった事にも気がつけないと、スーツを購入する時にスニーカーを履いていくようなミスを犯してしまいます。

さらに細かな事をいうと、洋服には個体差があります。全く同じサイズの洋服でも、微妙にフィット感が違う事は珍しくありません。

私は試着を繰り返して「これだ!」という洋服が見つかると、全く同サイズの洋服を3着ぐらい試着室に持ち込んで、一番フィットするものを選んでいます。

流石にここまでしろとは言いませんが、不思議なもので全く同じサイズの洋服を試着しても、着心地やフィット感に差があるものです。

おそらく前に試着をした人の影響で生地が伸びてしまっていたり、縫製を担当する人の違いといった事も関係しているのかも知れません。

それこそダメージ加工や色落ちしているジーンズだと、同じサイズでも随分と印象が違うのではないでしょうか。革製品なども個体差が大きいもので、しっかりと試着をする事が大切です。

スーツ姿はそれなりにカッコ良いのに、普段着がイマイチなお父さんが多いのは、まさにこれらの微差と向き合う事がないからです。

気がつきもしないので原因も分かりません。料理が下手な主婦ほど、ろくに味見もしないでレシピや食材の文句を言っているものです。

オシャレな男性になりたい人は、日頃から鏡と向き合い、試着力を磨いておいてください。所有している洋服の中からでも、何となく似合う洋服とそうではないものの違いが分かるようになり、微差を見極められるようになっていきます。

試着時の見極め方については、当ブログの他の記事で色々と紹介しているので参考にしてほしいのですが、それらだって料理でいうところのレシピのような事であり、そのまま鵜吞みにすれば良いわけでもありません

レシピ本に「最後に味見をして物足りなかったら塩を加えましょう」とあったとしても、そもそもその料理の美味しい塩気が分からないと判断できません。

こればっかりは経験がものを言うので、日頃から鏡と向き合いながら経験値を積み重ねていく必要があります。

芸能人のようにスタイリストが調節してくれるような人であれば別かも知れませんが、私も含めて多くの一般男性はそんなわけでもなく、モデル体型でもないので、日頃から鏡と向き合って試着力を磨いておいてください。

安易に分かりやすいファッションを取り入れるのではなく、きちんと微差と向き合ってください。これこそが多くの人から嫌われないオシャレに見える男性への道のりですよ。

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