粋な男性ファッションとは言葉の意味を調べると分かります

ファッションコラム

粋な男性ファッションとは?

しばしばファッション雑誌などで、「粋な男性ファッション」といった特集が組まれているものですが、大抵はあまり目立たないところにお金を掛けるといった感じで、粋をはき違えているものです。

「見る人が見れば、分かる」のような事を、粋と勘違いしてしまっています。

粋な男性ファッションというのは、粋という言葉の意味を調べてみると、その方向性が見えてくるものです。

粋の意味

「粋」という言葉の意味を調べてみると、

 気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること。また、そのさま。

とありました。ここで少し分かりにくいには「あかぬけ」です。これも意味を調べてみると、

野暮ったさがなくなり、洗練された様子。

とありました。

要するに粋なファッションとういのは、何か特別なアイテムを身につける事ではなく、野暮ったさがないという事です。

目立つ成金ファッションのような、これ見よがしな着こなしが粋ではないのはイメージできると思いますが、だからといって目立たない箇所にお金を掛ける事が粋なのでもありません。

しばしば男の粋なファッションとして、汚れやすい靴にお金を掛けるといった事があげられるのですが、だらしのない不潔なファッションにピカピカの靴を合わせても、粋でも何でもありません。

ファッション好きの男性の中には、ここを勘違いしている人が多いように思えます。全く洗練されていません。

粋なファッションとは、あくまでも野暮ったさを無くす事であり、プラスの要素を取り入れる事ではなく、マイナスの要素を排除する事です。

マイナスの要素

このプラス・マイナスの要素というのは、ラーメンで例えると分かりやすくなります。

話題になっているラーメンというのは、何かしらの分かりやすい特徴があるものです。

激辛だったり、チャーシューが大きかったり、意外な具材がトッピングされていたりと、誰の目から見ても特徴が分かります。

そこに惹かれる人にとっては、自分好みの美味しいラーメンとなるわけですが、全ての人に好かれる味ではありません。一部の人にだけ好まれる味です。

一方で昔ながらのシンプルなラーメンというのは、話題になる事はありませんが、多くの人から好かれる味です。

行列に並んでまで食べたいとは思われなくても、多くのお客さんに愛されているので、安定した売り上げになります。

一時的に話題になったラーメンの多くは数年で廃れてしまいますが、昔ながらのシンプルなラーメンは生き残っていきます。

このシンプルなラーメンというのは、美味しさの秘訣が素人ではなかなか判断できません。なぜに美味しいのか分からなくとも、「悪くはない」として多くの人に愛されます。

もちろんラーメンの知識がある同業者であれば、丁寧に出汁を取っているなり、食材の下ごしらえをしっかりとしているなり、麺の茹で汁を頻繁に変えているなり、何かしらの理由が見えてくるものですが、一般の人にそれらの理由が分からなくとも、きちんと伝わるからこそ多くの人に愛される事になります。

これこそがプラスではなくマイナスを排除した粋な姿です。

素人に分かりやすく伝わる要素がなくとも、何となく伝わってしまうのが洗練されているという事であり、徹底的に野暮ったさを排除した結果です。

分厚いチャーシューといった分かりやすいプラスがなくとも、スープとのバランスを考えた厚みに切り揃えて下味をつける事で、絶妙なハーモニーを醸し出しています。

粋なファッションも同じです。

分かりやすい特徴ばかりに目を向けていると、一部の人にしか好かれないファッションになってしまいます。

趣味の仲間と集う時であれば、その趣味に関連する分かりやすいファッションが評価されるかも知れませんが、それ以外の人達からすると残念なファッションにしかなりません。

オシャレ好きの仲間と集う時であれば、ファッション雑誌の流行を取り入れるのも良いのですが、それを職場にまで持ち込んでしまうと、野暮なファッションになってしまいます。

プラスの要素は万能ではありません。使いどころを誤ると粋でもなんでもなくなってしまいます。

一方でマイナスの要素を排除するのであれば、一部の人に強烈に好かれる事はなくとも、多くの人から受け入れられるファッションとなります

周囲の人に簡単に見抜かれてしまう分かりやすいプラス要素は、多くの場合で粋にはなりません。

見抜かれない工夫

周囲の人に簡単に見抜かれてしまう要素というのは、簡単に言うと目立つ事です。

これ見よがしに金ぴかの腕時計をしていると、誰にでも成金丸出しの残念なファッションとして伝わりますが、シャツのボタンをいくつもはだけていたり、暑くもないのに腕まくりをしていたり、曇っているのにサングラスをしていたりといった事も当てはまります。

本人はオシャレの為に取り入れている事でも、やり過ぎ感が出てしまうと粋ではありません。

シンプルなラーメンに彩りとして盛り付けられるホウレン草やナルトも、美味しすぎても問題なわけです。甘みの強い高級ホウレン草や味の濃い贅沢なナルトを盛り付けてしまうと、スープとケンカしてしまいます。

むしろ安いホウレン草でもしっかりとアク抜きをする事で、雑味を抑えて彩りや食感を残せますし、味の薄い安いナルトの方が、ほどよく厚みをもたせて口の中でスープと絡まります。

粋なファッションというのも同じで、あくまでも全体のバランスが重要であり、どこかが目立ってしまうとバランスが崩れてしまいます。

数年前から流行っている持ち手のないクラッチバッグなどが分かりやすいでしょうか。

クラッチバッグは車移動で荷物を運ぶ必要がない人に似合うファッションであり、通勤電車に似合うものではありません。

女性とのデートでも片手が塞がっていると荷物を持ってあげる事が出来ませんし、扉を開けてあげるようなちょっとしたエスコートにも支障が出てしまうかも知れません。

クラッチバッグは自分で車を運転しながら、移動が多いような男性でなければ似合いません。旅行鞄を普段使いしないように、かなり限られたシーンでないと粋に使いこなす事など出来ません。

オシャレの為には多少のやせ我慢をするのが粋だと勘違いしている人もいるのですが、周囲の人の迷惑になるような要素は粋でも何でもありません

ジャケットが本切羽だからと、これ見よがしに腕まくりをする男性もいますが、暑い夏場ならジャケットを脱いでシャツだけ腕まくりをした方がずっとスマートです。

中途半端なオシャレテクニックを、粋と勘違いしてしまっている男性が珍しくありません。

TPOに合わせたファッションを意識している男性は多いですが、余計なテクニックを取り入れて野暮になってしまわぬよう気をつけたいものです。

シンプルも難しい

これといった特徴がないシンプルなラーメンが多くの人に愛されると紹介しましたが、だからといって適当なラーメンでも良いという事ではありません。

全力でシンプルなラーメンを目指す必要があります。

ラーメンが冷めないようにスープを入れる前に丼を温めたり、茹で上がった麺を箸で持ち上げやすいように絡まりをほぐしたり、綺麗に具材を盛り付けたりといった事をサボってしまうと、ただのラーメンに成り下がってしまいます。

粋なファッションも同じです。

「まぁ、シンプルな普通のファッションでいいんだろ」程度の認識では全く足りません。そのような認識では清潔感を保つ事すら出来なくなってしまいます。

洋服の購入時にきちんとサイズを合わせ、TPOを意識したコーディネートをしていても、それだけで安心しないでください。

トイレに行く度に鏡の前で髪型の崩れをチェックしたり、脂性の男性ならあぶらとり紙で抑えたり、ジャケットのフケを落としたりといった微調整が出来ないと、残念な印象になってしまいます。

ファッションレベルの高い女性は当たり前のように行っている事ですが、男性は軽く手を洗っただけで立ち去る人が多いものです。中には手すら洗わない人もいますが。

街の紳士服店で購入した安いスーツでも、カッコよく着こなせている人とそうではない人がいますが、このような微差が結果となって表われています。

スーツを脱いだ時にサッと洋服ブラシをかけ、ホコリを落として生地の毛並みを整えていると生地の風合いを保つ事ができます。

すると生地が傷みやすい箇所にも気がつくようになります。足を組むといったクセや鞄のストラップの擦れといった事に気がつくようになり、日頃の所作も洗練されていきます。

靴磨きをしていると靴底の減り具合から歩き方のクセに気がついたり、革靴の構造やデザインによっても、履き心地や疲れ具合に随分と差がある事に気がつきます。

すると移動が多い出張時や雨が降りそうな日に合う革靴といった基準が生まれ、上手く使い分けられるようになっていきます。

台風が近づいているなら、汚れを落としやすい合成皮革の靴が向いているかも知れません。雨が染み込みやすく滑りやすい靴底が革の高級革靴は向いていません。

洋服選びも同じです。グレーのように汗染みや雨が目立つような色を避けるといった選択も出来るようになります。

このような微差を積み重ねる事で、シンプルなファッションでも周囲の人に違和感を感じさせずに、洗練されたファッションに近づいていきます

これこそが粋なファッションという事になるのではないでしょうか。シンプルイズベストといっても、適当なシンプルと、しっかりと向き合うシンプルでは雲泥の差があり、その差が「粋」な印象として現れるのだと思います。

まとめ 粋とは結果

「粋」という言葉を英語にすると、「smart」とありました。スマートなファッションというと、特別なファッションアイテムは浮かばないと思います。

粋な印象とはあくまでも結果の事であり、何か特定のアイテムや行動に対して当てはまるものではありません。

ちょっとした汚れ仕事をする時に、シャツの腕まくりをするのは粋な事ですが、常に腕まくりをする事が粋な事ではありません。

夕日が眩しい時間帯にサングラスをかけて運転するのは粋ですが、その時間帯以外は野暮なだけです。

しばしば「粋な蕎麦の食べ方」として、三分の一ぐらいしか汁につけないといったものが紹介されていますが、これだって必ずしも正解ではありません。

江戸前の蕎麦は汁が濃いので、三分の一ぐらいつけるのが丁度良いとされているのですが、蕎麦屋や地域によって汁の濃さは違います。出汁のうまみを存分に味わう為に、あえて薄めの汁を提供している蕎麦屋もあります。

汁が絡みやすいように蕎麦も細く切ってあり、どっぷりと汁に浸した方が美味しくなる事もあります。そのような蕎麦屋は汁が薄まった時の為に、追加できる汁を用意してくれているものです。

そのような薄味の汁の蕎麦屋で、粋がって三分の一しか付けないのは野暮なだけです。粋をはき違えています。

これらと同じように特定のファッションアイテムや着こなし(着崩し)テクニックが、粋なのではないという事を理解してほしいと思います。

あくまでもその時々に適したファッションや仕草が、粋な印象になるだけです。

粋の意味の中に、「しかも色気があること」とありましたが、この色気こそが、口では簡単に説明できない要素の事でもあります。

デカデカとブランドロゴが目立つ分かりやすいファッションアイテムに、色気は漂いません。

むしろジャケットのボタンを留めて、チラ見せするぐらいの方がすっと粋です。

どこがどう良いのか分からないからこそ、魅力的な色気が醸し出されます。

それが微差の積み重ねです。どこのブランドかも分からないシンプルなバッグやベルトでも、丁寧に扱いながらメンテナンスをしていると、独特の光沢がにじみ出てくるものです。

新しい洋服の生地には硬さがあってフィットしないものですが、きちんとメンテナンスをしながら生地の良い風合いを保っていると、抜群にフィットしてきます。

適当に扱っていると、せっかくフィットしてきた頃に生地が傷んで寿命を迎えてしまいます。

これは革靴の履き心地の方が分かりやすいでしょうか。適度に革が柔らかくなり、中底が足裏の形に合わせて沈んでいき、どんどん足に馴染んでいきます。

靴紐を緩めて脱ぐ事もなく、靴同士を擦り合わせて脱いでいると傷だらけになりますし、靴べらを使わずに強引に押し込んで履いていると、履き口が広がって型崩れしてしまいます。

靴底がすり減っていなくても、見た目がズタボロで買い替える事になってしまうわけです。

このような事では色気が醸し出される事はありません。

粋なファッションというのは、誰かに簡単に見破られてしまうような事ではなく、誰にも違和感を感じさせる事なく色気を醸し出す事です

多くの男性も女性に対してよく分からない色気を感じる事があるのではないでしょうか。露出の多い洋服といった分かりやすい要素が無くても、どことなく色気を感じさせる女性がいるように、男性ファッションにもどことなく男らしさや誠実さを醸し出す色気が存在します。

「美は細部に宿る」といった言葉があるように、細部に手を抜いているようでは粋なファッションにはなりません。シンプルなファッションでも差が出るのは、この細部の仕上げ方の差です。

ファッション雑誌ではイタリア人男性のオシャレが取り上げられる事が多いですが、多くは分かりやす過ぎで粋ではありません。

もちろん雑誌では分かりやすいように伝える必要があるので仕方がないのですが、イタリア人とは地域も容姿も体型も違う日本人がそのまま取り入れてしまうと、薄味のそば汁をちょっとしか付けないような、粋がっただけの残念な印象になってしまいます。

イタリア車はオシャレでカッコいいデザインが多いですが、日本ではドイツ車に乗っている男性の方が女性に人気があるように、分かりやすいオシャレが必ずしも良いわけでもありません。

日本車でも最近のマツダ車は流麗なデザインでイタリア車のような美しさがあるのですが、全く女性人気はありません。

むしろ無骨なデザインのスバル車に乗っている男性は、なぜか綺麗な彼女や奥さんを連れているものです。

スバル車に乗ったからと言って女性にモテるわけではありませんが、質実剛健な雰囲気の落ち着いた男性の方が、多くの女性に好かれるのはイメージできるのではないでしょうか。

「車なんて何度もいい」といった感じで中古のカローラに乗っていても女性にモテませんが、スバルの普通車(尖ったモデルは別)に乗っていると、同姓の男性からも嫌われる事もなく、彼女や奥さんからも嫌われず、奥さんの両親からも嫌われません。

無難な選択と思われるかも知れませんが、適当にカローラを選ぶ無難さとは違います。

中途半端に粋がってスポーツカーに乗ってしまうと、一部の人からしか好かれず、その他の多くの層から嫌われてしまいますが、無難な中でも上限辺りを上手く選ぶと、多くの層から嫌われる事もなく、一部の車好きからも「よく分かっているね」といった評価をされるものです。

もちろんドイツ車やスバル車を選ぶ事が粋なのではありません。雪深い地域や悪路の多い山奥に住んでいる人なら普通車よりもSUV車の方が粋ですし、沖縄のように平坦な道が多い地域なら、燃費の悪い4WDのスバル車は意味がありません。

昔ながらの狭い道が多い地域なら、小回りが利くコンパクトカーの方が適しています。

これらのように粋に正解はありません。あくまでも相性があるだけであり、そこを無視してしまうと粋がっているだけの残念な印象になるので気をつけてほしいと思います。

オシャレなファッション雑誌で紹介されているアイテムも、南青山に住んでいる人には適しているのかも知れませんが、その他の地域では浮いてしまう可能性が高いので、そっくりそのまま取り入れるのではなく、自分の体型や環境と向き合ってバランスを取ってください。

小柄な男性がこのようなマフラーを真似てしまうと、小柄さがより際立ってしまうかも知れません。全く同じマフラーを選ぶ事よりも、短いマフラーの方が相性が良いような事です。

このような些細な要素と向き合う事で、周囲の人から簡単に見抜かれるような事もなくなり、どことなく色気のある粋なファッションに近づけると思います。

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