男性ファッションのバランスはお酒で考えると分かりやすい

ファッションコラム

男性ファッションのバランス

少し前のテレビでワインの特集が組まれていたのですが、そこで一流のソムリエが語っていた言葉が凄く印象に残りました。それは、

「美味しいワインに正解などありません。あくまでも料理が主役であり、それを上手に引き立てられるワインが美味しいのであり、ワインの味だけで判断すると台無しにしてしまいます」

という言葉です。

ソムリエというのは客観的にワインの味だけを判断する能力が求められそうなものですが、あくまでもワインは料理の脇役に徹する事が大事であり、そこを見失ってしまうと美味しいワインには出会えないとの事でした。

これは男性ファッションのバランスとも凄く似ているなと感じました。

男性のファッションというのも、自らが主役になろうと主張が強くなってしまうと、大抵は残念な印象になってしまいます。いわゆる成金ファッションのような事です。

女性とデートをするのに相応しい男性ファッションというのは、あくまでも女性を引き立てる事が大事なのであり、自分よりも目立ってしまうようなファッションの男性を求める女性は多くありません。

ビジネスにおけるスーツといったものも同じで、誠実さや清潔感を醸し出す事で仕事への本気度や信頼性をアピールできるのであり、相手がこちらに期待している人物像へ近づけるファッションこそ、大切な仕事が引き立ってくれます。

リーズナブルな商品を扱っている相手の腕に金ぴかの腕時計が輝いていると、「何か裏で悪い事をして儲けているんじゃないか?」といった事を考えてしまいますし、逆に銀行員に腕におもちゃのようなチープな腕時計があると、どことなく信用できないように思えてしまいます。

ワインの味を見極められるソムリエのように、ファッションそのものの良しあしを見極められる事も大事ですが、一番大切なのは周りの人から期待されるファッションを、上手く演出する事なのではないでしょうか。これさえ分かれば男性ファッションのバランスというものも、イメージしやすくなるはずです。

お洒落好きとお酒好きの共通点

お酒好きの人だと、好きなお酒に合うつまみや料理といった観点で選んでしまう傾向があるのですが、料理が主役だと考えているシェフやソムリエが選ぶお酒となると、基準が全く変わるのはイメージできるのではないでしょうか。

私はお酒に詳しくないのであまり具体的な事は言えないのですが、淡泊な味の白身魚の料理に合うお酒というのは、香りや甘みが強いワインではなく、あっさりとしたワインなのではないでしょうか。

逆に濃厚なチーズや濃い味のソースの料理に合うワインとなると、口の中をリセットできる酸味の強いワインの方が相性が良いのかも知れません。

外国人観光客に人気の日本の和牛のコースを提供するお店では、6種類の料理に合わせて提供するおちょこ一杯の日本酒を、全て変える事で大人気になっているところがあります。

熱燗やぬる燗といった事まで考えており、おちょこもそれぞれに相応しいタイプに選ぶ事で、口が肥えた富裕層の外国人の中で大人気になっているのだそうです。

品評会で一位に輝いた日本酒が最も美味しいのではなく、あくまでも料理を引き立てられる日本酒が美味しいのであり、だからこそソムリエのような職業が成り立つのではないでしょうか。

男性ファッションというのも同じで、自分よがりな個性的なお洒落をする人というのは、好きなお酒に合わせてつまみを選ぶような事であり、必ずしも周りの人にとって良い結果になるわけではありません。

自他共に認める天才や大金持ちやイケメンなのであれば、自分よがりな基準のお洒落をしても通用するのかも知れませんが、私も含めてそのような武器がない多くの一般男性にとっては、ただただ煙たがられる存在になってしまいます。

これは女性にモテる車で考えてみても分かりやすいかも知れません。車好きのお金持ちほど、自分の基準だけで高級スポーツカーを選んでしまいますが、乗り心地の良い大型セダンや広々としたSUV車の方が、ずっと女性人気が高いものです。

自分の基準で選ぶ事が悪いわけではないのですが、女性にモテる車を手にしたいのであれば、スポーツカーのような車が正解だとは言えません。

お年寄りを乗せる事が多い介護職の車であれば、あまり奇抜な色は選ぶべきではありませんし、落ち着いた色や乗り降りしやすい要素が重要なポイントになるはずです。

これらのように目的から逆算すると、ファッションでも車でもお酒でも最適なバランスや方向性というものが見えてくるのですが、自分よがりな基準だけで選んでしまうと、なかなか周りの人からの評価にはつながらないものです。

目的をはっきりさせよう

釣りが好きな人にとっては、女性からモテる要素など関係ないですし、釣りの道具を収納できるポケットが多いものや防寒機能といった事が重要なポイントになります。

寒い冬場に外で仕事をする人にとっては、防風機能や防寒機能が何よりも大事ですし、スポーツをする人にとっては動きやすさが重要なポイントになるものです。

もちろんお洒落を楽しみたい人にとっては、自分の気分が高揚する基準で選ぶ事が間違いではないのですが、その要素を職場や仲間や恋人といる時に持ち込んでしまうと、バランスを崩す要因となってしまうので、上手くコントロールする必要があります。

洋服のコーディネートや髪型のセットぐらいであれば、誰もがコントロールする事ができますが、髪の色や長さというのはコントロールが難しいので、よほどの覚悟がない限り、個性的な要素は取り入れるべきではありません。

アニメキャラが大好きな人であれば、自宅の中の部屋着として楽しむ分には誰の迷惑になりませんが、職場に着ていってしまうと場の空気を乱す要因となってしまうように、的確にコントロールできないと周りの人から評価が下がってしまいます。

「それも個人の自由だろ!」

といった意見もありますが、少なくても周りの人からの評価にはつながりませんし、そこを束ねる経営者や上司からすると、省きたくなる気持ちも分かるのではないでしょうか。

銀行の窓口にチャラい恰好の奴がいると、客からの信用を失ってしまいますし、寝ぐせ頭や悪臭のような事だって、相手からの信用を失ってしまいます。

誰もが好きな恰好をしても良いような世の中が理想ではありますが、看護婦さんが装飾が凄いネイルをしていると、注射を打たれる患者は不安になってしまうように、やはり求められる服装というものがあるものです。

医療従事者の制服の色が明るいのは、汚れが目立ちやすい色だからこそ、清潔感をキープしやすい(汚れに気がつきやすい)からですし、料理人の制服が白いのも同じ理由です。

あまり清潔感のない食堂や居酒屋のようなところだと、店主が黒いTシャツを着ていても良いのかも知れませんが、それなりにお洒落なレストランのシェフや従業員がラフな恰好をしていると、お客さんはガッカリとしてしまいます。

当然、お客さん側の恰好にも当てはまります。そのお店に相応しくない恰好をしているお客さんは、入店を断らないと他のお客さんの迷惑になってしまいます。

これを差別だという人もいるのですが、これは差別ではなく区別であり、その線引きの基準が人それぞれ違うだけです。男女平等が良いとはいえ、銭湯の掃除のおじさんが女性用の脱衣所に立ち入るわけにはいきません。

温泉や銭湯でタトゥーが入っている人がいると、やはり周りの人は落ち着きません。外国人観光客のお洒落なタトゥーだとしても、それだけを許してしまう方が差別になりますし、しっかりと区別しなければならないケースがあるものです。

絶対的な正解のファッションなどありませんが、相手側から求められる役割を満たせているファッションという視点を理解できると、自然とファッションの方向性も導きだされるのではないでしょうか。

まとめ 男性ファッションは脇役

ドレスコードのあるレストランやパーティーだと、男性のファッションというのはスーツやタキシードといった感じで、あまり個性的な要素は取り入れられません。

一方で女性のドレスとなると、ドレスコードの中でも様々な選択肢があるので、個性的な要素が許される傾向があります。

あくまでも男性ファッションというのは、女性や周りの引き立て役に徹するべきであり、自らが主役になろうとしてしまうと、ろくな結果になりません。

一部の天才やお金持ちのような人であれば許される事もありますが、それらだって大抵は、後ろ指刺されてバカにされるファッションになってしまいます。

それでも天才やお金持ちであれば引く手あまたなので、うまい汁を吸いたい人達が群がってくるものですが、そのような突出した武器がない多くの一般男性にとっては、ただただ勘違いしているバカな奴という印象になってしまいます。

料理の味を引き立てられるお酒が美味しいように、男性ファッションもあくまでも相手や立場を引き立てられるのが、バランスを取る事になるのではないでしょうか。

肉料理の付き合わせの野菜といったものだって、あくまでもメインのお肉に合わせた大きさや彩りが選ばれるのであり、メインよりも目立ってしまったり、味付けが濃いと台無しにしてしまいます。

特定のお酒に合う料理を提供する飲食店もありますが、そのようなお店はそのお酒が好きな人にだけしか好かれません。東京のような人口の多い大都会であれば、一部の好きな人達が集まってくれて成り立つかも知れませんが、人口の少ない地域で同じ事をしてしまうと、かなり集客が難しくなってしまいます。

甘いワインが好きな人でも、料理との相性によっては酸味が強いお酒でもそれなりに美味しく楽しめるものですが、酸味の強いワインを中心に組み立ててしまうと、酸味の強いワインが好きな人しか対象になりません。

特定の目立つファッションや個性的なお洒落というのも同じで、女性の方から群がってくるイケメンやお金持ちであれば、一部の好みが一致した女性だけでも上手くいくかも知れませんが、私のようにこれといった武器がない多くの一般男性にとっては、ただでさえ多くない選択肢を益々狭めてしまう結果になってしまいます

ホリエモンがどんな恰好をしたって、金持ち好きの女性や支配者的な男性に惹かれる女性は変わらずに群がり続けますが、一般男性がホリエモンの恰好を真似たところで、何もメリットがないような事です。

これはホリエモンの取り巻きの人達のファッションを見ると、よく分かるのですが、ホリエモンはスーツやネクタイなんてどうでもいいといったスタンスですが、周りにいる人達は意外と清潔感のあるきちんとした恰好をしているものです。

流石にガッチリスーツを着こんでいるわけではないのですが、清潔感のあるジャケパンスタイルが多いですし、カジュアルな恰好でも襟付きシャツを選んでおり、ホリエモンほどラフな恰好をしている事は多くありません。

これが現実です。一部の天才やお金持ちやイケメンにだけ許されるファッションというものがあり、その場のバランスをぶち壊してでも通用してしまう人物でなければ、ただただ勘違いした残念なファッションに成り下がってしまいます。

サングラスなどが分かりやすいのですが、サングラスがお洒落として許される一般人など滅多にいません。サングラス越しからでも伝わってくるイケメンやお金持ちオーラでも発していない限り、ただただ嫌味な奴になってしまいます。

全然女性にモテない平凡な男性が個性的なファッションを取り入れる事で、一部の女性から好かれるようになる可能性もあるのですが、その一部の女性以外からは嫌われる結果となってしまうので、よほど運よく相手が見つからないと益々モテなくなってしまいます。

逆に誰からも嫌われない普通のファッションをバランスよく着こなせるようになると、一部の女性に劇的に好かれる可能性はありませんが、その一部の女性の含めて多くの女性からの評価を、少しだけ上乗せする事ができます。

周りに上手くいく確率が30%の女性が10人いたとして、バランスの取れたファッションで全ての女性に対して10%の上乗せができると、トータルでプラス100%の計算になりますが、1人の女性に対して80%に上げる個性的なファッションというのは、残りの9人の確率が20%に減ってしまうので、トータルだと「80+(9×20)=260」となり、元の300%と比べて40%ものマイナスになってしまいます。

もちろんその80%の女性が好みのタイプなのであれば、悪い結果ではないのですが、先に相手の好みが分かっていない事には、運よく一致する可能性は限りなく低いです。

ターゲットの女性の好みに合わせる事が悪いわけでもないのですが、女性は周りの友達からの評価も気にするので、「あんな勘違いファッションの男なんてあり得ない!」という噂話が流れると、せっかくターゲットの女性に合わせたファッションでも裏目に出てしまう事があります。

逆に多くの女性からの評価が上乗せされると、「なんか最近のあいつは垢ぬけたよね」といったポジティブな評価になり、多くの女性から対象にしてもらえる確率が上がります。

個性的なファッションや目立つファッションが有効に働くケースがないとは言いませんが、基本的に男性ファッションというのは脇役であり、相手側に求められる役割や機能を満たしている要素と向き合った方が、何かと成功率が高くなってくれます。

脇役がいるからこそメインが引き立つのであり、自分を上手く引き立ててくれる存在というのは大事にしたくなるものなので、結果的に多く人から重宝される事になります。

男性ファッションのバランスというのは、お酒のように脇役に徹する視点を持つ事で、相応しい方向性が見えてくるものなので、目的から逆算して考えてみてください。

お酒(自分)をメインにしてしまうと、一部の居酒屋のようにやたらと料理の味付けを濃くしてビールをすすませるようになり、肝心の料理のバランスまでおかしな事になってしまいます。

もちろん周りの人からの評価よりも、自分が気持ち良くなる事が大事な人であれば、好きな恰好をするのが悪いとは言いません。ただそれで周りの人から煙たがられる結果となってしまっても、文句を言う筋合いはありませんよ。

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